ブランドジュリエ Paris通信 10月のアルザス、マスネ蒸溜所とリースリングの葡萄畑
10月のアルザス、
マスネ蒸溜所とリースリングの葡萄畑
11月28日(土)、フランスの商業施設が営業再開しました。
10月30日から始まった2度目の外出制限は、
こうして予定通り解除され始めています。
この調子でなんとか、クリスマスを迎えたいもの。
みんながそう願っています。
今回お届けするアルザス日帰り旅行は、
今年フランスが体験した2度の外出制限に挟まれた、
10月の出来事です。
メゾン・マスネのご招待で、
蒸溜所を見学するプレスツアーに出かけました。
アルザス地方、
皆さんは旅行されたことがおありかもしれませんね。
美味しい食べ物で有名な土地です。
リースリングワイン、
種類豊富なソーセージを煮込んだシュークルート、
クグロフというケーキ、などなど。
かわいらしい景観も有名で、
ディズニー映画「白雪姫」の風景は、
アルザス地方のコルマールという街を
モデルにしていると言われています。
また、フランスでクリスマスマーケットといえば、
アルザス地方ストラスブールの
クリスマスマーケットが一番有名。
このように魅力あふれる地方ですが、
私はアルザス地方へ行ったことがありませんでした。
ドイツ国境で、遠いイメージがあったからです。
が、実は、パリ東駅からストラスブールまでは、
T G Vでたったの2時間弱。
日帰りできる距離でした。
ストラスブール駅に到着すると、
そこはブリュッセルやアントワープに似た建築。
やはり同じ文化圏ということでしょう。
ストラスブール駅は、
19世紀後半の歴史的建築をガラス張りのシェルで覆った、
近未来感あふれるデザインでした。
明るく開放的で、フランスの東の玄関口にふさわしい!
ここから車に乗って、コルマール方面へ約40分ゆくと、
メゾン・マスネの蒸溜所に到着します。
その道中が、ご覧ください!
リースリングの葡萄畑が紅葉し、まるで黄金の絨毯のよう。
私たち日本人にとって、
秋の紅葉はごくありふれた景色だと思いますが、
今回リースリングの紅葉を見て、
心がしっとりと潤う気分を味わいました。
最も、この日の天気のせいもあったかもしれません。
残念ながら一日中雨でしたので。
でもその雨という要素を外しても、紅葉する山々は
程よい湿度を心に与えてくれるように感じました。
そういう自然の要素は、
人間の気質に大きく影響するかもしれませんね・・・
メゾン・マスネでは、
かの「ポワール・ウイリアム」の製造工程を見ることができました。
中に洋梨の入ったボトルに、
洋梨のオー・ドゥ・ヴィ(蒸留酒)を詰める作業です。
この洋梨入りボトル、
どのようにして作っているのか不思議ですよね?
なんととても単純に、
洋梨の実がまだ小さい時に上からボトルをかぶせて固定し、
そのまま熟すのを待つのです。
シンプルなだけに、ロスも多いはず。
メゾン・マスネのベルナール・ボー社長に質問したところ、
「ボトルを10本固定すると、そのうちの4本が成功します。」
とのお返事でした。なんとまあ・・・
「洋梨が完熟した時に収穫します。
オー・ドゥ・ヴィの中で洋梨は自分の持つ果汁を全て与えきり、
小さく硬くなります。その後は変化しません。」
つまり、いつまでも同じ状態で長持ちする、ということ。
「時々、この洋梨を食べようとして
ボトルを壊す人がいますが、もったいないことです。
第一、カチカチに硬くて切ることもできません。
それよりも、飲んで量が少なくなったら、
中の洋梨が空気に触れないように
新しいオー・ドゥ・ヴィを継ぎ足してください。
そうすればずっと同じ状態で楽しめますよ。」
ボー社長のアドバイス、ぜひ参考にしてください!
メゾン・マスネは今年150周年を迎えたとのこと。
今も一貫してファミリー経営、
そして「オー・ドゥ・ヴィのオートクチュール」を作っていました。
なぜオートクチュールかというと、
まず、生産規模がそうですし、手作業であることもそう。
原材料は絶対に妥協せず、
看板商品の野生フランボワーズのオー・ドゥ・ヴィは、
本当に森に入って
野生のフランボワーズを摘んでくるのだそうです!
野生フランボワーズを摘んで、
それを発酵させ、蒸留して、オー・ドゥ・ヴィにする・・・
想像するだけでもとんでもない作業。
一体どれだけの野生フランボワーズが必要なのでしょう。
今では野生フランボワーズのオー・ドゥ・ヴィを製造するのは、メゾン・マスネだけというのにも肯けます。
ちょっと説明を加えると、
例えばフランボワーズのリキュールを作るのであれば、
ずっと簡単です。
リキュールは、焼酎のようなホワイトリカーに
フランボワーズを漬け込むことで作れます。
が、オー・ドゥ・ヴィの場合は
そのホワイトリカーそのものが100%フランボワーズなのです。
リンゴの蒸留酒はカルヴァドス、
ブドウの蒸留酒はコニャック。
それと同じ。お分かりいただけますか?
蒸溜所見学の後は、山間のシャレーのレストラン
「オーベルジュ・シェ・ギュット」へ。
アルザスだからシュークルートを食べるのだろう、
と、この日誰もが思っていたのですが、
その期待はとても素敵な方向に外されました。
「オーベルジュ・シェ・ギュット」は、数々の名店で修行した
若いシェフが地元に帰り、独立して構えたお店でした。
アルザスの幸を盛り込んだ、洗練されたお料理の数々。
そのいくつかをご覧ください。
アミューズ(突き出し)は、
クルミのジブレ(塩味のシャーベット)、ひよこ豆のクラッカー。
1つ目の前菜は、ローストした雑穀と、
バターナッツかぼちゃのクリーム仕立て。
ワインはもちろん、リースリング!
2つ目の前菜は、2種類の卵料理。
温泉卵と、カリッとフライにした卵。
メインに合わせるワインは、南仏の赤。
カモのローストは、干し草でスモークして仕上げました。
私はブロシェという
川魚のクネル(ハンペンのようなもの)を。
クリーム、ドライ、生、と3つのテクスチャーの
カリフラワーも素敵でしたー!
チーズの前に、メゾン・マスネの看板商品、
野生フランボワーズのオー・ドゥ・ヴィをかけた
シャーベットをいただきました。
食事の間にシャーベットを食べて満腹のお腹を楽にする、
習慣というか、作法というか、
「トゥル・ノルマン」(ノルマンディーの穴)と言われるものです。
これで実際に、満腹のお腹が落ち着くからびっくり!
チーズの盛り合わせは、2人分ずつ、
こんなに品よくサーヴされました。
フランスでサーヴされるチーズの量は、
大抵ものすごく多いのですが、
こんなふうに一口ずつでも十分ですよね。
チーズの盛り合わせには、メゾン・マスネのリキュール
「ゴールデンエイト」を合わせて。
デザートは、まるでフルーツを卵白でまとめただけ、
というくらいに軽くフレッシュなイル・フロッタント。
コーヒーと一緒にサーヴされたフィナンシエと
パート・ド・フリュイも、全て、自家製です。
シェフと奥様。若いお二人に心からブラボー!
お料理と同じように、レストランの内装もアルザスらしい
自然の要素を保ちつつ、品よく洗練されていました。
シュークルートもいいですが、
こんなふうに土地の食材を味わわせてくれるお店も、
嬉しいですよね。
「オーベルジュ・シェ・ギュット」からの眺め、
まるでハイジとペーターがかけて来そうでしたよ。
ニルスが乗りそうなガチョウもいて、
なんとも心なごむアルザス日帰り旅行でした。
(ガチョウはもちろん、シェフに料理される運命ですけど・・・)
メゾン・マスネの看板商品たちをお土産にいただきました!
野生フランボワーズのオー・ドゥ・ヴィ、
8年もののポワール・ウイリアムで作った
リキュール「ゴールデンエイト」、
そして150周年を記念して生まれたコニャックベースの
オレンジリキュール「ドン・パチェロ」。
クリスマスの時期に嬉しいお土産です。
フランボワーズのオー・ドゥ・ヴィは、
やっぱりシャーベットにかけて食べたいですし、
「ドン・パチェロ」はぜひババオラムに使いたい!
「ゴールデンエイト」はトロッと甘いのでカクテルに・・・
それとも、フランスの伝統にのっとって、
食後酒にそのまま飲もうかな?
イメージが膨らみます。
フランスは東西南北にそれぞれの風土があり、美食があり、人々の気質があって、
本当に豊かな発見に満ちています。
今はあまり旅行できませんが、
いつかフランス全土を見てみたい。
そう思わせてくれたアルザス日帰り旅行でした。
それではまた、アビアントー!
Keiko SUMINO-LEBLANC
パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者
1997年からパリに移住。
パリでの結婚・子育てを経て
フリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、
フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。
keiko’s paris journal <パリ通信 – KSL> パリのライフスタイルを更新中