ブランドジュリエ Paris通信 ガレット・デ・ロワ

ガレット・デ・ロワのエピソード、いろいろ
 

1月のフランスといえば、ガレット・デ・ロワ!
この伝統菓子のない1月など考えられないというくらい、
パン屋さんのウインドーにも、スーパーにも、
ガレット・デ・ロワがずらりと並んでいます。

バターたっぷりのパイ生地に、
ほっくりとしたアーモンドパウダーの餡
(一般にはアーモンドクリームと呼びますが、
「餡」という表現がぴったり)を挟んだガレット・デ・ロワは、
日本ではまだまだ珍しい存在のようですが、
年々人気が増している様子。
きっと皆さんの中にも
食べたことのある方は多いと思いますし、
「今年はもう5つも食べたわ!」という方も
いらっしゃるかも知れません。

フランスではもちろん、とてもポピュラーな存在です。
家庭では食後のデザートに食べたり、
4時のおやつに食べたり
(日本は3時ですが、フランスのおやつの時間はquatre heure=4時)、
職場で同僚と分け合ったり。
学校の給食にも登場します。
1月のうちに必ず何回か食べることになる、
人気の高いスイーツ、と言えますね。

 

パイ生地とアーモンドパウダーの餡、
この組み合わせはどことなくオリエンタルで、
さすが、エピファニー(公現祭)のお菓子だな、と、
食べるたびに思います。
エピファニーについては検索していただくとして、
ここではクリスマスから続く一連のキリスト教のお祝いで、
東方の三博士がイエスの誕生を祝うために駆けつけ、
到着した1月6日を祝うもの、ということだけメモします。

東方の三博士・・・
オリエンタル・・・アラブ菓子・・・アーモンド・・・と、
ガレット・デ・ロワを味わいながら、私の頭の中は
いろいろなイメージがくるくると巡るのでした。

 

ところで、
ガレット・デ・ロワの正式な(?)食べ方をご存知ですか?
① テーブルを囲むメンバーの中で、一番歳の若い人がテーブルの下に潜ります。
② ガレット・デ・ロワを切り分ける人は、「これは誰の分?」と、テーブル下の人に聞きながら、みんなに配ります。
(テーブルの下の人が「誰それの分」と指示します)
③ 一斉に食べます。
④ 自分のカットの中にフェーヴ(小さな陶器のオブジェ)が入っていたら、あなたがその日の王様(または女王さま)!
王冠を頭にのせましょう。

という話は、きっと皆さん、よくご存知ですよね。
日本にはフェーヴのコレクターもいるくらいですから。

 

でもまだ知られていないエピソードも多いので、
今回はそれらについて書きたいと思います。

まずは、ガレット・デ・ロワの袋について。
フランスでガレット・デ・ロワを買うと、
必ず専用の紙袋に入れて渡されます。
日本だと、ケーキ用の箱に入れてくれると思うのですが、
フランスでは凝ったガレット・デ・ロワを作るパティシエの店は別として、普通はこんな紙袋です。

そもそもが、パン屋さんで買うカジュアルなお菓子なので、紙袋がちょうど良いのですが(包装代がもったいない!)、
実はこの紙袋にはちゃんと使い道があるのです。

家に帰って食べる前に、
オーブンでガレットを温めますよね。その時に必要!

以下、パン屋さんの奥さんが教えてくれた、
ガレット・デ・ロワの温め方:
① オーブンを最高温度で充分に温めます。
② オーブンのスイッチを切って、
ガレット・デ・ロワを袋ごと入れ蓋をします。
③ 5分間待ったら出来上がり。ちょうど食べごろです。

「こうすると、パイ生地が乾燥しなくて美味しいの」と、
パン屋の奥さんの話でした。
以来私はずっと、この方法で温めて食べています!
日本の場合は、オーブンペーパーを使うといいですね。

続いては、エリゼ宮で振舞のガレット・デ・ロワについて。
フランス大統領官邸エリゼ宮でも、
毎年ガレット・デ・ロワが振る舞われるのだそうですが、
エリゼ宮のそれは、
他とは違うところが1つあるといいます。
何が違うと思いますか?
なんと、フェーヴが入っていません!
「共和国に王はいないから」ということで、
この話をラジオで聞いた時には、
フランス人は本当に、
知的な遊び心のある人たちだなあと面白くなりました。

以上、小話でした。

以下、今年私が食べたガレット・デ・ロワをいくつか。
まずは、今年最初に娘と食べたガレット・デ・ロワ。
我が家の斜向かいにあるパン屋さんで買いました。


これが絶品! 
特に何がすごいというわけではない、
ごくごく当たり前のガレット・デ・ロワなのですが、
噛めば噛むほど旨味が滲み出るパイ生地といい、
ほっくり仕上がったナッツ風味豊かな餡といい、
またその双方が重なり合うバランスの妙といい、
娘も私も感激しました!

年末に職人が変わったせいでしょう、
去年までとは別物でしたよ。
フェーヴはフレジエ(いちごのショートケーキ)。
私があてました。

 

二つ目は、メゾン・カフェのガレット・デ・ロワ。
フランス最優秀職人(MOF)パティシエで、
デザート世界チャンピオンの、パスカル・カフェさんのお店、パリ13区店で買いました。
本店はシャンパーニュ地方のトロワにあるそうです。

Maison Caffet
93 Rue de la Glacière
75013 Paris


さすがMOFパティシエのガレット・デ・ロワ、奇をてらわぬ伝統レシピで、とてもおいしかったです。

有名店になると、
オリジナルアレンジの凝ったものを出す所が多いのですが、
私は基本のガレット・デ・ロワが一番好き。
パスカル・カフェさん、
ファンの気持ちをよくわかってくださっています!

フェーヴはスマーフでした。これも私が当てましたよ!

3つ目は、2017年パリのバゲットコンクール優勝店、
ブラン・ブーランジェでゲット。

なんとこの店のヴィエノワズリー(菓子パン)は、
エシレのバターを使っているのです!
バターが命のガレット・デ・ロワです、最高峰バターを使って作ったら、絶対美味しいに決まっている!
ガレット・デ・ロワを買うついでに、
パリNo1に輝いたバゲット・トラディションも買って、と・・・

フェーヴは、またしても私が当てました。スネイプ先生。
今年、ブラン・ブーランジェは、
ハリーポッターのキャラクターフェーヴを選んだそうです。
ブラン・ブーランジェのガレット・デ・ロワも
伝統レシピそのもので、私は大満足でした!

上の3つのガレット・デ・ロワの他にも、
あと2つ、食べました。
まだまだ、もういくつかは食べたいです。
季節限定のこのお菓子が、本当に大好きなので!

考えてもみれば、今の私たちパリの住人にとって、
ほとんど唯一の自由がグルマンディーズ、食べる喜びです。
何事も過ぎたるは及ばざるが如しなので、
「ほどほど」に留意しながら、
家で食べる喜びを満たしたいと思います!

それではまた、健康第一で!
アビアントー!

 

 

 

 Keiko SUMINO-LEBLANC
 パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者

 1997年からパリに移住。
パリでの結婚・子育てを経て
フリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、
フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。

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