ブランドジュリエ Paris通信 ベアトリス・ラヴァル ②
ベアトリス・ラヴァルさんのパリのご自宅を訪問!②
ブランドジュリエのオーナー中川麗子さんが、
「色の天才!」と賞賛する
ベアトリス・ラヴァルさんのご自宅を、
中川さんに代わって訪問の続編です。
ベアトリスさんは、ファブリックブランド
「Le Monde Sauvage(ル・モンド・ソヴァージュ)」の
デザイナー兼社長です。
キッチンの天井は、なんと黄色!
通常、フランスの住まいは、
たとえどんなにエキセントリックな内装でも、
天井は白と決まっています。
ジヴェルニーにあるモネの家のように、
黄色をキッチンの壁に取り入れる人は多いですが、
なぜまた、天井に?
「明るい黄色をキッチンに使いたかったのですが、壁と床をグレーにしてしまったので取り入れようがなくて・・・
じゃあ、天井は? と(笑)。
試してみたところ、なかなか悪くありませんでしたよ。」
黄色に塗った天井は、すみれ色がかったベネチアングラスのシャンデリアと相まって、
なんとも個性的な空間を作り出しています。
シャンデリアと同系色のベロアのカーテンもいい感じ。
「カーテンやクッションなど、ファブリックは
住まいに色を持ち込んでくれるもので、花と同じです。
だからこそ、ル・モンド・ソヴァージュのファブリックは、
豊富な色を提供しています。
家具や壁色と違い
ファブリックは簡単に取り入れられますから、
自由に遊ぶといいと思います。
先日読んだ記事に、
『住空間は私たちに残された最後の自由な場所』という
表現があって、確かに、と思いました。
外に出れば交通ルールがあるし、マスクをつけたり、
必ず決まり事を守らなければなりませんが、
家の中では何をしてもいいのです。もし失敗しても、それは自分の家。誰の迷惑にもなりませんから!」
「キッチンの棚を、私は『台所の本棚』と呼んでいます。
キッチンツールはとても美しい。
まさに用の美だと思います。だからこそ、本棚に並べるように見せる収納をして、かつ使いやすいようにしています。
母から譲り受けた大きな陶器や、
11歳の娘が5歳から通っている陶芸教室で作ったお皿、
アンティークのポットなど、どれも大切な宝物です。
大切な宝物を毎日使えるなんて、幸せなこと。
壊すのが心配だからと仕舞い込むよりも、日々の喜びの方を選んでいます。」
料理好きなベアトリスさんのために、
銅鍋などの高価なキッチンツールをプレゼントしてくれる友人もあるそうで、
そういった特別な道具も本当に使っていると言います。
飾りで置いているのではなくて・・・
そして極め付けは、イギリス製オーブンコンロ!
「これは私の自慢です!
一般的なオーブンともコンロとも違った使い勝手でして、
使いこなすためには段取りが必要です。
長時間じっくり調理する料理に最適なのですよ。
お招きをするときも、
朝オーブンの中に料理を入れて日中ずっと加熱して、
最後にグリルで仕上げて
テーブルに出す、といったことができます。
調理時間中に
他の作業を同時進行できる所はとても便利です。」
女性社長で、デザイナーで、
3人の娘を持つ母親で、素敵な夫の妻でもある。
そして日々の料理も完璧?! そんな人が存在したなんて!
「好きではないことはしていませんよ、
例えば掃除は他の人にお願いしていますから!(笑)
料理は、私にとってはメディテーションのようなもの。
ものすごく集中して料理をした後は、
頭がすっきりしています。
フランスでも女性は
どうしても多くの仕事を担いがちなので、
完璧を目指さないことがうまくいく秘訣かもしれません。
そう思えるのはきっと年齢のおかげですね。
若い頃は誰しも頑張ってしまうものですから。」
ところで、お嬢さん作の器。
フランスの子供たちにとって
陶芸は人気の習い事の一つですが、
こんな風に実際に使ったり飾ったりできる作品は
見たことがありません。
「これは彼女曰く『北斎の波』です。
ティータイムに焼き菓子を乗せたり、
アペリチフに
フィンガーフードを盛りつけたりして使っています。」
彼女もお母さんと同じように、
生まれながらのクリエーターなのかもしれません!
続いてはベッドルームへまいりましょう。
リビングのブルーのドアの向こうが、夫婦の寝室です。
ここでもやはり、壁と同じ色に塗ったドアが素敵です。
考えてみれば、どうして今までドアは必ず白だったのか?! 思い込みというのは恐ろしいものです。
ベッドルームの壁は、
「オフブラック」と名付けられたFarrow&Ballの黒。
オフホワイトの黒バージョンのような感じで、柔らかな黒です。
ベッドの上にはたくさんのクッションが重ねられていて、
クッション、ベッドカバー、シーツ、
どれも素材や色、柄がバラバラ。
色選びのアドバイスとしてベアトリスさんが話してくれた
「悪い色も、悪い趣味もない。ただ調和を見つけるだけ」
という言葉が思い出されます。
この風景こそ、その言葉の生きたお手本です。
「世界中の面白いものを集めていた
ル・モンド・ソヴァージュ創業当時のブランド理念を、
今も大切にしています。
どこか遠い国から持ってきた
不思議な色や素材は、本当に魅力的です。
それをいつもの生活の中に差し込むと、
意外な面白みが醸し出されることがあります。
ダイバーシティを大切にして、頭を固くせず、
文化や習慣の違い、考え方の違いを楽しめたら、
生活はもっと素敵になるのではないでしょうか。」
ベアトリスさんが提供しているのは
単にファブリックではなくて、
人生を豊かにするフィロゾフィーだ。
彼女を訪ねて、そう感じました。
ベアトリスさんによるカーテン、クッション、壁紙、
そしてカーテン用フックなどを、
ブランドジュリエは厳選して取り揃えています。
どんなふうに住まいに取り入れられるのか、
中川さんが説明するYouTubeおすすめです!
クッションの色を一つ、差し替えるだけで、
空間の雰囲気がガラリと変わることがわかりますよ。
それではまた、
アビアントー!
Keiko SUMINO-LEBLANC
パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者
1997年からパリに移住。
パリでの結婚・子育てを経て
フリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、
フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。